2025年度人権講話を行いました
「国境を越えて」〜 地球のステージ・桑山紀彦氏が語る、命と希望の物語
10月28日(火)、高校体育館にて、中学・高校の生徒を対象に人権講話を実施しました。今回は、NPO法人 地球のステージ代表理事であり、医師として戦乱地や被災地で医療支援活動に尽力されている桑山紀彦氏をお招きしてご講演いただきました。
桑山氏は、佐久市でも過去に何度か講演活動を行っており、生徒たちに「自分だったらどう行動するか、を考えてほしい」という強いメッセージを伝えてくださいました。


【前半:旅と気づき—「名前と名前の出会い」】
講話は、桑山氏のギター弾き語り「国境を越えて」と、世界各地の雄大な自然が連続する映像で幕を開けました。故郷である岐阜県飛騨高山から世界へ飛び出し、20歳から始まった放浪の旅について語られました。夢であった世界の5峰踏破を果たした後、ゴミの山に住むフィリピンの人に衝撃を受け、「ここに生まれなくてよかった」という「愚かな始まりの感情」を抱きます。しかし、風船をきっかけに心を通わせた少女「ロエナス」さんとの出会いや、貧困のため治療を受けられないおばあちゃんに目薬を差し出した経験から、桑山氏は「貧困と医療格差という人権問題」に気づかされたそうです。「ロエナスさんと自分のように、名前と名前の出会いを大切にしてほしい」と、生徒たちに呼びかけられました。
【後半:世界の「今」と平和の責任】
講話は、SDGsの目標16(平和と公正)と目標17(パートナーシップ)に関連する最新の現場の経験へと続きました。
- ウクライナでの経験: スマートフォンで鳴り響く空襲警報、ドローンの羽音。男性が要職を離れる中、女性が多くの役割を担う現実を目の当たりにし、心理的・社会的な支援の重要性を訴えられました。特に、息子の帰還を待つ女性が、心の準備としてパステルカラーの粘土で軍事車両とお墓を作る姿は印象的でした。
- パレスチナでの経験: 長年支援を続けてきたガザ地区の少年モハマッドさんは成長後、現地特派員として情報を伝え続けていましたが、今年3月、ドローン攻撃により28歳で亡くなりました。桑山氏はモハマッドさんの意思を弟や妹が引き継いでいることを伝え、戦争とは「自分との戦い」であること、また「命の重み」を強く訴えかけました。




最後に桑山氏は、平和と戦争は学校の中にも存在すると指摘し、「合わない人とは距離をとる」「攻撃しない」「その中で一緒にやっていく」といった身近な行動が平和を育む第一歩であると強調しました。生徒からは「自分の本心や弱みを人前で言えるほど強くなるには?」「どうしたら夢をかなえる信念をもてるか?」「思いをのせて楽器を弾くためには?」など、自分のことに置き換えた質問が数多く出され、講話が生徒たちの悩みに深く響いたことが感じられました。
